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「「「きゃあぁぁーーー!」」」
またも教室に悲鳴が響く。
男とは思えないほど高い悲鳴。耳が死ぬ。
「なんでいらっしゃるの!?」
「朝から八神様を、拝見できるなんて!」
「幸せすぎる!」
「抱いてください!」
今チワワたちが口にした名前を聞いて驚いて扉の方を振り返る。
え?ほんとになんでいんの?
視界に入った男は見慣れた顔。漆黒と言うに相応しい髪と瞳を持つ長身の美形。
取り巻く空気は氷点下並で、その男が視線で一蹴しただけでチワワたちは先程の喧騒はなんだったのか、ぴたりと口を閉ざしてしまう。
その男は、何かを探すように教室に目を向け、ある一ヵ所で目を止めるとそちらに向かって歩いていく。
「ぐぇっ」
今のは俺の声。
何故こんな声が出たのかというと、その長身美形の男──八神葵がこっちに向かって歩いて来て、俺の肩に肘を乗せのしかかってきたからである。
そして何故こいつが朝から来たことに驚いたのかというと、まず一つはこいつがいつもホームルームギリギリに来るか余裕で遅刻してくる不良だからであり、もう一つは俺の同室者で今朝は朝食後部屋に帰っていったからである。
部屋で二度寝してから来ると思っていたのだ。
「なんで置いていったの?」
「だって出発する時間に来なかったじゃん。」
「呼んでよ」
「お前いっつも呼んでも来ねぇだろ。ぐっ、」
肩の重みが増した。
「お、重い、どいて」
肩の不良は一向にどく気配がない。
横の腐男子がこっちを見てニヤニヤしながら鼻から血を流しているし、そろそろ俺が潰れそうなのでどいてほしい。切実に。
その時、教室の扉がガラガラッと開いた。
扉の所に居たのは、今一番来てほしくない人物だった。
「生徒諸君!今物凄く萌えが足りないんだ!俺に萌えを提供してくれ!」
入って来たのはこの2ーSの担任である久藤皐月。
そして今のセリフもこの教師である。
そう、今の挨拶がわりのようなセリフ。どういう意味なのかわかるだろうか?
つまり担任は堕天使と同じ人種、腐男子なのだ。
そしてホストではない。まあ、1ーSにホスト教師はいるのだが。
この人はそんなに格好良くない。確かにイケメンではあるが、しわしわのYシャツ、寝癖の取れていない髪、そして腐男子、残念イケメンなのだ。
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