食堂イベント、喜劇か悲劇の始まりか

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 ────ドスッ  肩に重みが、 「わっ、庵くん!」  びっくりした。  庵くんが肩に頭を埋めていた。  今まであっちの生徒会の方に集中していたから気がつかなかった。 「どうしたの?」 「……いすずの、匂い……した」  匂いって……。  もう本当にわんこだなぁ。 「あっちはいいの?」 「ん……うるさい」  蘭は目の前でやっぱり、という顔をしている。  庵くんは基本人見知りだし、あんなもじゃもじゃに懐く訳がない。 「……それ」  庵くんが俺のパフェをじーっと見ている。  やっぱり腹が減ってるんだな。  俺はスプーンですくい、俺の顔の横にある庵くんの口まで持っていく。 「はい、どうぞ」  それにパクっと食いつくと、途端に頬を緩める。  普段は目付きが鋭くて強面だけど、笑うとかわいい。  その表情を見て俺も吊られて頬を緩める。 「……ありがと」 「いいよ」  多分庵くんはこんなんじゃ足りないだろうから、そのままスプーンを渡す。  庵くんは少しのあいだスプーンと俺を交互に見つめると、スプーンを受け取り俺の隣に座る。  残り半分程になったパフェを食べ始める。  庵くんが幸せそうに食べるから、何だかこっちも嬉しくなってくる。  少しの間庵くんを見て、俺は転校生に目を戻す。  さっきとさほど様子は変わっていない。  ふと会長が、転校生としゃべっている会計と双子に近づいてくる。 「お前たち……こんなのがいいのか?」  同意。  なんであんなのを気に入るのかわからない。 「かいちょー、茉央ちゃんはいい子だよ!」 「そうだよ!ゆーちゃんもそう言ってるもん!」  いきなり自分に振られた侑李は、多分今全力で転校生のことが好きだという設定を撤回したいだろうな。  相変わらず表情には出ていないけど。 「お前も遊びたいのか?お前の名前も教えろよ!」 「うるせぇ、寄るな。不潔だ。最低限人前に出る時は鏡くらい見ろ。」  かなりズバズバ言ってるな。全部事実だけど。 「なっ、友達にそう言うこと言っちゃいけないんだぞ!」  途端に生徒たちからブーイングが起こる。  会長まで友達扱いなことが驚きだ。
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