日常と混乱の兆し

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 あの教師の前でこの体勢は非常にマズい。 「葵、退けって」  小声で葵に訴えてみる。だがその瞬間、腐った教師がこっちを見てしまった。 「おぉ、お前らついにくっついたか!」  なんか酷い誤解が生まれた気がする。 「いやぁ、長かったな。これからも存分萌えを提供してくれ」 「違います。俺が一方的に潰されてるだけです。」 「つまり、お前はマゾだと?」 「頭腐ってやがりますね」 「褒めてるの?」 「処置の施しようがありません。」 「まあ、とりあえず今から、ホームルームだから八神は席につけ。その後存分にイチャイチャしろ」 「今までもイチャイチャなどしたことありませんが、葵退け」 「今日の晩飯ビーフシチュー」 「わかったから退け」  ビーフシチューと引き換えに葵は席に戻ってくれました。  ちなみに葵の席は窓際一番後ろと特等席。俺はその隣だ。  あの腐教師は腐ってはいるが教師の仕事はしっかりとやっている。腐っているということを除けば教師としては有能だ。だからSクラスを任されいるのだろうが。  この学園は成績、素行、家柄、容姿などでクラスを分けられる。成績や素行で分けるのは普通の学校でもあったりするが、家柄や容姿で分けるのはこの学園の特異性からだろう。  中学までは普通の公立だったため、編入したばかりの頃はそれでいいのかと思ってしまったものだが、この学園で過ごすうちにそうなっている理由を理解した。  金持ちはプライドが高い。自分より劣る人間に上に立たれることを嫌う。  例えば成績と素行だけで分けたりして庶民で容姿の良くないガリ勉が上のクラスに入ったとする。家柄や容姿を重視するこの学園では、その生徒は他の生徒からの嫉妬の対象となるのだ。  そうするといじめがおこる。普通のいじめならまだいい。いや良くはないが。  親の権力まで行使されては後ろ楯の無い一般庶民はひとたまりもない。  俺が表向き庶民ということにしているのにSクラスにいても大丈夫なのは、首席であり、容姿が認められているため反発が起きないからだ。  ────と、そんなことを考えている間にホームルームは終わりそうだ。  だが、最後に腐教師が爆弾を落としていった。 「あ、そうだ。夏樹、理事長から呼び出しがかかってるから。このあと理事長室ね。」  は?
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