歓迎なんてしていない。

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 生徒会と風紀委員は仲が悪い。  正確には、生徒会長と風紀委員長、皇と篠原の仲が悪い。  家柄、成績、人望、容姿、全てが拮抗するが故に起こった対立。  最も大きな原因は家同士の仲の悪さ。  つまり二人は、物心ついた時からお互いのことを嫌っていたのである。  そんなに小さな頃からの対抗意識が簡単に消える筈もなく、二人の仲の悪さは全校の間で周知の事実となっている。  なので生徒たちは、侑李でさえも、二人が顔を合わせるという事態を、なるべく作らないように行動している。  トップ同士が対立していれば、自然とその下につく組織の仲も悪くなるというもの。  もともと、生徒会の会計や双子は問題を起こしてばかりいるので、風紀委員とは仲が悪いのだ。  侑李は比較的上手く立ち回っているので、そこまで悪くはない。  庵くんは仲が悪くなる要素がない。  だが、仕事上書類を交換することは多々ある訳で、基本的には侑李がその伝達係だ。   そして、侑李がいないとき、拒否したとき、侑李の手にも負えないとき、俺が駆り出される。  俺は両組織共に仲が良いと言えるので、最適な訳だ。  ただの一般生徒である俺を、使いっ走りにしないでほしい。  自分の仕事くらい自分でやれっての。   その事が伝わったのか、侑李が怖い目で見てくる。  そんな目で見なくても、俺だって会長と風紀委員長の接触なんて胃の縮むような思いはしたくないので、引き受けるつもりだ。  だが、侑李が行けば俺は行く必要がないのでは?と思ったが、新入生歓迎会の準備が思った以上に忙しそうなので、やめておいた。 「はぁ。これを届ければいいんですね。」 「あぁ、頼んだぞ。」  会長のデスクの上に置かれた書類の束をつかみ、再び生徒会室の外へ向かう。  そういえば、転校生のせいで生徒会は腐る、と蘭は言っていたけれど、全くそんな様子は見られなかった。あくまで、今見た感じはだが。   双子が出した転校生の生徒会室への立ち入り許可は、侑李が即座に打ち消した。  だが、生徒会の仕事が遅れているのもまた事実。 それを転校生のせいで生徒会が機能していない、と思っている生徒たちもいる。  大きな要因は、会長の不在が多いということか。  会計と双子は、基本的に誰かに絡んでサボっているので、今はその誰か、が転校生になっているだけのこと。  会長が抜けた分、仕事の進度が遅れている。
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