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───で、今俺は理事長室の前に来た訳だが。
いつ来ても思うのが、流石金持ちだなぁ、ということだ。大きな扉に細かい装飾。学校にある施設とは思えませんね。
しかしどうにも嫌な予感がする。その原因は教室をでる時に堕天使がキラキラ?した視線を送ってきたからだろう。
つまり転校生が来るのではないかということだ。
もし本当に蘭が言うような日本語の通じない宇宙人が来るのなら俺は絶対関わりたくない。というかそもそも来て欲しくない。
そして理事長室に入るのも少し気が引ける。理事長は悪い人ではないのだが、相手をしているとどうにも疲れるというか。
まあ、ここで俺が理事長室に入らないという選択肢はないのだが。
意を決して俺は理事長室の扉を開ける。
「やあ、久しぶり五十鈴。元気だった?体調崩してない?困ってることない?」
「大丈夫だ。質問攻めはやめてくれ。疲れる。」
そう、悪い人ではないのだが、少々過保護過ぎるのだ。
「だって心配だったんだ。何かあったら絶対私に伝えてくれよ?」
「理事長、そこまでにしてあげて下さい。五十鈴さんも困っているでしょう。」
今、理事長を止めてくれたのが秘書の神崎時雨さん。理事長の雅也さんが暴走し過ぎないようにしっかり止めてくれるからいつも助かっている。
「それで、俺がここに呼び出された理由は?」
「冷たいなぁ。」
「そんなこと言ってないで早く用件を言ってくれ」
「えー」
「理事長がこんななので私からお伝えします。」
「え、ちょ、時雨?」
狼狽える理事長を沈めて時雨さんは続ける。
「一週間後、この学園に転校生が来ます。」
うん。予想が的中してこんなにも悲しいとは。
いや、まだマリモ宇宙人じゃない可能性も残っている。悪い方に考えるな、俺。
だがその後時雨さんが発した言葉は、俺の動きを止めるのに充分だった。
「そしてその転校生なのですが、日比谷なのです。」
───────日比谷か…………。
「五十鈴、くれぐれも気をつけてくれ。」
いつの間にやら復活したらしい雅也さんがそう言った。
「大丈夫だよ。雅也さん。」
雅也さんは少し悲しそうな顔をした。そしてその目が意味することを俺は理解し、言い直す。
「大丈夫だよ。─────義父さん」
* * *
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