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理事長室を出た後、俺はある人物にメールを送った。
『今日の放課後、俺の部屋に来い。ビーフシチューだから。』
誰に送ったかは後々説明するとして、ついでだから蘭も誘っておこうか。
葵は嫌がるだろうな。あいつ大人数で食事とか嫌いだから。
教室に戻る気分でもなくなってしまった。
サボるか。
まあ、特待生は授業免除だからサボったところで怒られることはないのだけれど。
あ、普段はちゃんと授業出てるからね?
ここは進学校。いくら首席といえど、あまりサボってはあいつに抜かれてしまう。それは屈辱。
俺が向かったのは庭園。その名に相応しく正に庭園。どこか外国の貴族の屋敷にありそうな。
そこは一般生徒が来ることはない。生徒会専用なためだ。どちらにしろ今は授業中なのでふらふらしてる生徒などほとんどいないと思うが。
何故生徒会ではない俺がそこに入れるのかというと、それはまあコネですね。
だってあそこ本当に居心地がいいんだもの。
人はほとんど来ないし、綺麗だし、昼寝に最適。
だが今日は先客がいたようだ。まあ、彼なら全く構わないが。
ベンチに横たわって気持ち良さそうにお昼寝中なのは生徒会書記、瀬戸口庵だ。
蘭が言う通り正に無口ワンコ。
自分より大柄の男を可愛いと思ったのは初めてでした。
男だらけのこの学園で数少ない俺の癒し。
そんな庵くんを起こさないように木にもたれて座り、目を閉じると、あっという間に眠ってしまった。
* * *
小鳥のさえずりと木々のざわめきの聞こえる美しい庭園に一人の男が訪れていた。
銀灰の瞳と髪。
これ以上ないほどに完璧に配置されたパーツ。
美形の多いこの学園でも類を見ないほど美しかった。
ふと木の下を見ると、二人の男が眠っていた。
一人は生徒会書記。もう一人は一般生徒。ここに入れる一般生徒など一人しかいない。
その生徒は無防備に寝顔をさらして眠っていた。この学園の異常性を考えれば、あまり褒められた行為ではない。
もし写真でも撮って売ったりしたら一体いくらになるのやら。
だがそれと同時に少し疲れが取れた気がした。
「さて、続きをするか。」
そう呟いて彼、この学園の生徒会長、皇飛鳥は庭園を後にした。
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