日常と混乱の兆し

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 *     *     *  目を覚ましたらすぐ横に庵くんがいて驚きました。  どうやら俺が寝ている間に移動してきたらしい。  俺はふと腕に着けている時計に目をやった。  え!?  もうすぐ放課後じゃねぇか。どんだけ寝てたんだ、俺。我ながらすごいと思う。  俺が起きたことに気づいたらしく、庵くんも目を覚ました。 「……おはよ。」 「お、おはよう?」  今は午後3時半。果たしておはようと挨拶していいものなのか。  まあ、そんなことはどうでもいいとして、今日俺は葵様のためにビーフシチュー作らねばならんのだ。  今から購買と言う名の大型スーパーにて材料を買いに行かなければ。 「庵くん、俺もう行くね。」 「……また、……来る?」  小首を傾げながら不安げな表情でそう問う庵くん。やはりかわいい。  このワンコを置いていくのはすごく気が引けるのだが、それよりもビーフシチュー作らなかったら葵様が恐い。 「また来るよ。」  そう言って庭園を後にした。  *  俺はスーパーにより、野菜と高級肉を買って寮に戻った。金持ち学園にあるスーパーなだけあって食材の品質はすごくいい。  まあ、値段は庶民に優しくないのだが。  俺は特待生なため食費などについては学園が負担してくれる。  あまり家のお金を使いたくないのだ。まあ、学園を運営しているのは義父(とう)さんなため、微妙なところなのだけれど。 「ただいま。」 「おう、おかえり。」 「おかえり!」  今のはどちらとも葵の声ではない。  一つは言わずもがな堕天使。  もう一つは今日メールで呼んだ男。  ダークブラウンの髪に中性的な顔。綺麗な男だ。  そいつは今人ん家のリビングのソファに堂々と座り、小型機械を持ってその画面から目を離さず指を残像が出来るレベルの速さで動かしている。  いつ見てもあいつの指の構造がわからない。  そいつ、神崎(カンザキ)侑李(ユウリ)は苗字から分かる通り、あの優秀な秘書の弟である。  そして俺の幼馴染みであり、俺に続く学年次席であり、この学園の─────生徒会副会長である。  勿論、いつもこんなにだらけている訳ではない。  表の顔は、正に王道通りの腹黒副会長だ。  しかし裏の顔は、  ──────ガチのゲーマーである。
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