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「ありゃりゃ、君タフだね。石化が遅いや」
そんな女性の声が響く。しかし、そんなことを気にしている場合じゃなかった。
「おい!あの化け物の背中!石になってるぞ!」
「私はメデューサ。石化の魔人よ!冥土の土産にでもしなさいっ!」
なぜなら僕の身体は、胸元から背中にかけて、ジワジワと石になり始めていたから。
「それにしてもバカなのかい?人を庇うために蛇の全視界を自分に集めるなんて、正気の沙汰じゃない」
そういったメデューサがあの時のように口を大きく歪ませて笑う。けれど、僕に対抗できることはない。ジワジワと身体が石になっていて、息も苦しくなってきた。
「本当に醜いわ。人間たちも、庇う貴方も」
そして、メデューサは僕の被り物に手を掛けた。
「最後にその死に顔を見届けてあげましょうか!平和ボケしたマヌケの顔を!」
拒むことも許されず、被り物は容易に剥がされた。その奥の僕を見て、メデューサは一言。
「何も……無い?」
そう言った瞬間に、メデューサの影から伸びた手がメデューサを影の中に引きずり込もうと身体をつかんだ。
「あ、貴方まさか!それは!」
必死に手を拒んでいたメデューサ。しかし、次第に言葉を発する余裕もなくなり、ついには影に引き込まれ、消滅した。
僕は化物。
人間じゃない。
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