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それから、僕は気が付くとあの廃墟に居た。
瓦礫の上に足を広げて座り込む僕は、穴の開いた屋根から差し込む月光を受けていた。
足元に広がる自分の影を、俯いて眺めていた。
そうすることしか、僕には出来なかった。
もう、僕の身体は動かなくなっていた。肌が石になって、その冷たさを実感できてしまう。どうする事も出来ない。どうしようもない。これからも僕は悠久の時をこの朽ちぬ身体で、朽ちたこの場所で過ごすのだろう。
考えてみれば絶望的だけど、僕は怖くない。
今までも同じだったから。
迫害されてからここを住処にして、騒ぎが収まるまで僕はここで時間を過ごした。
その騒ぎを知る人間が居なくなるまでの、永遠にも感じた長い時を。
それが、化物である僕の歩んできた道だったから。
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