「ありがと」

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僕は街が好きだ。だからよく街に行く。   けど僕は大通りを通るのが少し怖くて、公園のベンチに腰かけている時だった。 「あの、すみませんそこのお方」  そんな声が聞こえた時、僕は最初全く動かなかった。声を掛けられる事なんて無かったし、声を掛けられるなんて思ってもいなかったからだ。 「あの、そこの……ト、トマト?の人?」  その言葉が確証的だった。それに少しだけ違和感を感じた。  なぜなら、その言葉が上から掛けられたように感じたからである。  咄嗟に立ちあがってから上を見上げると、僕の目に映ったのは茶色の靴の裏だった。細い木の今にも折れそうな枝の上、その上に居たのは黒猫を抱きかかえた一人の少女。 「すみませんが、降ろしてもらえませんか?猫を助けようとしたんですけど降りれなくなっちゃって」  その言葉を無視しようかと考えたけれど、トマトの被り物を指して言われているのに無視するのはどうかなと思って。  手を伸ばして彼女の身体を掴んで、僕はそのまま地に降ろした。 「ありがとう!」  その声に頷いて答え、僕は公園から背を向けて歩いた。  その日から、僕と彼女の関係は始まった。
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