「ありがと」

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「そういえば、貴方は全く喋らないのね」 彼女の言葉が突き刺さる。人間の言葉はほとんど独学で学んだものだから、僕に使いこなすにはちょっと難しかった。 「でもクロも喋らないから、貴方、猫みたいね!」 でも、彼女が言葉を掛けてくれるのが、とても嬉しくて、とても楽しかった。 けれど、日が傾くとこの時間も終わり。彼女にも帰らねばならない場所がある。 「最近、街で人が固まっちゃう事件があるそうよ。死なないでねゾウの人!それじゃあまたね!」 そう言いながら帰って行く彼女の背中にちょっと焦がれた気分になりながら、僕はまた廃墟に戻る。 けれど、僕はその途中で見てしまったのだ。 人が、固まる瞬間を。
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