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五月の蜃気楼
久しぶりに来た海。
あまり天気がいいものだから、
昨夜呑みに出て置いて来た車を取りに出たついでに、こんなところまで来てしまった。
荷室からフォールディングチェアとプリムスのポータブルコンロを出して、お茶にしよう。
昼前の海は陽の光をきらきらと乱反射させ、虹色のスペクトルを溶かした優しい光線で砂浜を暖めている。
凪の浜辺の気温はぐんぐん上がる。
潮のにおいが鼻孔をくすぐる。
デニムのシャツを脱ぎ、裸足で波打ち際まで歩いてみた。
砂に削られた色ガラスのオブジェ。
カモメが潮風の上を滑って行く。
遠くで遊ぶ子供達の声が、貨物船の汽笛にかき消される。
…お、
コーヒーが沸いたようだ。
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