November Daybreak

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雨粒をワイパーで払ったフロントウィンドウシールドの向こうに、星が見えた。 相も変わらず 小雨は弱まる様子もなく ガラスにへばりついてくるくせに、 てっぺんの雲が切れたのに 降り続く雨なんて 今夜ノ空ハ幾分壊レ掛テルヨウダネ。 天空の双子はクスクスと笑ってばかりいる オリオンは 恋人アルテミスの目を盗み 家路を急ぐキャバ嬢を口説いている プレアデスの兄弟達は既に山の陰に 北の柄杓は 放り投げられたように空中回転 雨粒は まだガラスを叩いている 秋もあけぼの やうやう白くなりゆくやまぎは 少しあかりて 東の空に残った雲が切れ 折れそうなほど細い月が姿を現す オリオンが 口ごもって向こうを向く 空の白さは加速して増していく あれは月じゃない だって 彼女の爪の形そのものじゃないか 再びワイパーを動かして さぁ おうちに帰ろう
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