序 章:タイムスリップ

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序 章:タイムスリップ

2019年8月15日 日本国 東京都  昨年末に発売されてから数回のアップデートを経ているが、半年以上経ってもなお勢いが衰えることのない、第二次世界大戦を舞台にしたFPSゲーム『バトル・オブ・エネミー・ライン』。  俺は、このゲーム(B.O.E.L)に大学のサークルで知り合った仲間と一緒にβテストから参加している。これまでに費やした時間は、1000時間を超えている。俺より強い人がたくさんいるので、自分で言うのに抵抗はあるが、ゲーム内のランキングが上位のグループ、所謂ガチ勢の括りに入っているだろう。  B.O.E.Lのキャンペーンモードの舞台は、アメリカ海兵隊視点で始まる太平洋戦線と、アメリカ陸軍視点から始まる西部戦線の2種類がある。太平洋戦線は、大日本帝国海軍によるパールハーバー攻撃のオープニングから始まり、アメリカ軍によるフィリピン奪還、ガダルカナル島攻略、硫黄島攻略と歴史通りに進んでいく。最終ステージである沖縄攻略戦のあと、広島と長崎に原爆投下から日本のポツダム宣言受諾までのエンディングとなる。  日本人の俺からすると、ガダルカナル島や沖縄で、追い詰められて日本刀を手に突撃してくる日本兵を撃たなければいけないのは、俺たちの爺さんや親せきを撃っているかもしれないと考えてしまうので、良い気分がしない。だから俺は西部戦線の方はクリアしたが、太平洋戦線の方には手を付けていなかった。  オンラインでのマルチプレイモードでは、アメリカ軍、イギリス軍、ソ連軍等の連合国に対して、日本軍、ドイツ軍、イタリア軍の枢軸国側でプレイすることもできる。     
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