第5章:ハーケンクロイツ

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 前回の定例会議ではドイツの原子爆弾について、日本とソ連の諜報機関の調べで、ドイツが実験に成功した原子爆弾は、ほぼリトルボーイの模倣品だということはが分かった。恐らく作っただけで使用しないということは無いということから、近いうちにアメリカかイギリスで使用するものと思われるので、実験直後から日本とソ連の邦人には、アメリカの東海岸の主要都市から離れるように避難命令を出し、既に東海岸にある日本の企業も政府の全面的な支援ですべて西海岸に移転済である。ワシントンの大使館、ニューヨークの総領事館も一時閉鎖しており、現在は西海岸のロサンゼルスとサンフランシスコに避難させている。一応、今回は毛沢東にもドイツの原子爆弾の実験に成功した情報は渡して、東海岸で使用される可能性がある旨伝えたところ、素直にお礼を言って速やかに中国人を東海岸から移動させていた。この世界での毛沢東は日本という強力なバックアップがあるた め、国内であまり無茶な政策をとる必要がなくなり、もともと有能だった彼の手腕を中国の発展のために存分に発揮している。 『事実通りであればアメリカのマンハッタン計画が今年2月に始動し、3年後の1945年に完成となるため、現在はドイツが世界唯一の核保有国となっているのですが、万が一アメリカが今回の戦争でドイツに敗北するようなことがあれば、世界中にドイツの核外交が始まるでしょう。そうなった場合、この世界のほとんどの国はドイツの影響下に置かれてしまうことは確実です。そこで、我々はこの状況を指をくわえて見ていることもないでしょうから、我々も早急に核保有国となる必要があると思います。俺たちがこちらの時代に来てからすぐに、効率が悪い広島型では大量のウランを国内で調達するのが難しいので、長崎型原爆のインプロージョン方式の原子爆弾の研究開発を進めており、理論的にはほぼ完成段階にあるのですが、先ほど申したようにウランの調達が思い通りに行かず、ごく少量のプルトニウムの抽出しかできておりませんので、製造はまだ先になる見込みです。     
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