第5章:ハーケンクロイツ

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、美味しいのと食堂に行かなくてすぐ仕事に戻れると大変喜んでくれた。俺のせいで迷惑をかけているのだから、月内は毎日差し入れを続けることを約束したらとても喜んでくれた。これで仕事の能率が上がるなら安いものだ。  そんな超過勤務を強いられている職員達を尻目に、後ろ髪を引かれるような思いではあったが、早く楓さんが待っている家に帰りたいので、なるべく気配を消してそっと執務室を抜け出して帰宅した。  宮城内の自宅前に到着すると、窓から明かりが漏れていた。日中はお手伝いさんが来て掃除や洗濯等をしてくれているが、俺が帰る時間には既に帰っているので、家に帰って明かりがついているというのは新鮮だった。ドアを開けて玄関に入ると、楓さんが早歩きで玄関までお出迎えに来てくれた。  「誠司さん、おかえりなさい。不束者ですが今日からお世話になります。」     
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