第5章:ハーケンクロイツ

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「男性の一人暮らしだと仕方ないですよね。今日からは毎日私が作るので、この家の台所も本望でしょう。新品といえばこの家の家具は高級なものばかりでどれも新品に見えるのですが、もしかして、今回私が来るから新調したんですか?」 「はい、実は一昨日まで家具といえばこの食卓と書斎の机と椅子、敷布団が一組しかなかったので、寝に帰るだけには不便していなかったのですが、ここで生活すると考えると、どうも足りていないことに気付いてしまいまして、慌てて揃えました。」 「そういうことでしたか。誠二さんのお気遣いはとても嬉しいです。ありがとうございます。どれもとてもセンスが良くて素敵なものばかりなので、大切に使わせていただきますね。でも、これからは私の為にあまり無駄遣いはしないでくださいね。」 「はい。ごめんなさい。今度から気を付けます。」 「私のためにしてくれたことなのに謝らないでください。さあ、いただきましょうか。」 「はい!いただきます!」  みそ汁を一口すすった瞬間に口の中に幸せが広がった。俺の好きな赤だしのみそ汁で、アゴ出汁が効いていて、塩加減も丁度良い。すばらしく美味いみそ汁だ。 「このみそ汁本当に美味しいですね。完全に俺の好みの味付けです!」 「実は兄に聞いて誠司さんの好みの味に作ってみました。お口に合って良かったです。」 「なるほど、お義兄さんとはほとんど毎日一緒に食事をしているから、俺の好みはよく知ってますからね。」     
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