第5章:ハーケンクロイツ

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「株、債券以外にも金、不動産を組み合わせてポートフォリオ、つまりリスク分散型の投資をしています。すぐに現金が必要な状況にはならなそうなので、現在は流動資産と固定資産の比率は7:3にしてあります。」 楓さんが俺の言うことを一生懸命メモしているので、いったん話しを区切ろう。 「ここまでで質問はありますか?」 楓さんがすっと手を挙げる。 「はい、どうぞ。」 「分散型の投資をしているのは分かりましたが、個人で運用するには口座等の維持管理コストを考えると投資対象の種類が多い気がするんですけど、どんな理由なんですか?」 なっ、えっ?女学校を卒業したばかりの女の子には少し難しい話かと思って、少しずつ教えていけば良いかと考えていたが、楓さんは俺の説明を完全に理解したうえで、なかなか鋭い質問をしてきた。 「さすが楓さん、鋭い質問ですね。確かにポートフォリオと言っても、様々な方法があって、複数の国の国債を買ったり、株にしても複数の業種の銘柄に分散したり、国内だけじゃなく外国株を購入したりと組合せは多岐に渡るんですけど、現在ヨーロッパとアメリカは戦時体制にあるため、外国債はリスクが非常に高いことと、外国株に関してはそもそも市場の取引自体停止している国もあるので、必然的に投資対象は国内に絞られまして、それで国内の投資対象だけで、出来るだけリスクの分散を考えた結果が今の形になっています。」     
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