第5章:ハーケンクロイツ

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「あぁ、なるほどそういうことですか。それでしたら、この規模の資産を個人で管理するにはやっぱり管理リスクを伴うのと、税金面でのデメリットが大きいので、資産管理法人を設立して、誠司さんが直接経営している事業についても法人化して、ホールディングスを設立して運用してみてはどうでしょうか?」 「・・・・。」 「誠司さん?どうかしました?」 やばい、黙ってしまった。 「あっ、いや、楓さんの言う通りだなって思いまして。それにしても驚きました。どこで投資の勉強をしてたんですか?」 「それはですね、80年後の未来です。」 楓さんは今までとは雰囲気が変わり、真剣な空気になった。 「えっ?」 「ふふっ、冗談に決まってるじゃないですか。」 楓さんは笑いながら冗談だと言って誤魔化しているが、冗談ではないことがすぐに分かった。今日の日中に遥さんのハーケンクロイツの話しを聞いてなければ、冗談で済んでいたかもしれないが、今の俺には簡単に流すことはできなかった。 「リーマンショックって知ってます?」 笑顔に戻っていた楓さんの表情が、一瞬にして驚きと怯えの混じった表情に変わった。 「えっ?なんで誠司さんがそんなこと知ってるんですか!?」 「1990年6月13日ベルリンの壁崩壊、1995年3月20日地下鉄サリン事件、2001年9月11日世界同時多発テロ、2008年9月15日リーマンショック、2011年3月11日東日本大震災・・・。」 「えっ、なんで?遥に会ったの?遥から聞いたんでしょ!?」     
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