第5章:ハーケンクロイツ

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 楓に任せた事業についてもかなり張り切っているようで、まずは経営している飲食店5店舗を法人化すべく会計士と相談しながら、SK FOODSの設立準備に着手したとのことだった。ちなみにSKというのはSEIJIとKAEDEのイニシャルの頭文字なのは言うまでも無いだろう。楓は俺を社長にしたいと言ってきたが、俺には陸軍大臣としての重責があるし、俺は表に立たないから楓が社長の方がなにかと動きやすいと説明し、楓が代表取締役となる方向で決まった。また、しばらくは俸給の余剰分や株の配当、家賃収入も飲食店や学習塾の方に回したいと申出てきたので、全部楓の思い通りにやっていいと伝えたところ、とても喜んでくれた。そして、家のことも事業のことも全部楓がやってくれるようになったので、このままだとダメな男になってしまいそうだと気付き、俺は本業の陸軍大臣の方を頑張ろうと心の中で決意した。  楓はさらにその翌日には店を一店舗ずつ回って決算書や帳簿を確認し、一番売上げが上がっていないハンバーガーショップのテコ入れから着手を始めるとのことだった。視察初日でだいたいの問題点と改善点をリストアップしてきて、夕食後に表にまとめたものを俺に見せてくれた。アメリカ人が個人で経営している店舗は既に何店舗か東京にもあるが、まだ日本には全国展開しているハンバーガーショップのチェーン店が一つもない状況なので、今後は徹底したマニュアル化とセントラルキッチン等の効率的な仕入れと仕込みを武器に、国内外にチェーン展開を目指していくつもりらしい。これも言うまでもなくMのマークの大手ハンバーガーチェーンの模倣なのだが、楓曰く、成功するためには使えるものは全て使っていくとのことだ。     
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