妖精がいた世界

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僕には妖精が見えていた。今は見えない。 小学校1年生の時に家に帰ったら姉が先に帰っていた。 何気なく「ただいまー」と言うと姉に「さっきまで誰と喋ってたの?」と言われた。 僕は「しまった」と思った。玄関を開ける直前まで僕は妖精と喋っていたのだ。 「独り言とか気持ち悪い」 姉は冷たく言い放つと僕には興味を失くしたようで、テレビをじっと見ていた。 幼い頃から僕には妖精が見えていて、彼らと話をすることが多かった。 普段は妖精と話していることは秘密だった。バレれば気味悪がられるからだ。 僕に見えるのは三人の妖精で、栗みたいな顔をしていた。 一人は意気地がなく性格の悪いひねくれ者で、暗い嫌なヤツだ。イジオと呼ぼう。 一人は少年漫画の主人公のような性格で明るくて正義感の強いヤツ。ヒロシだ。 もう一人は年上の女で理想の姉のような性格だった。アカネちゃん。 たとえば僕が友達に意地悪をされると、イジオは僕と一緒になって悪口を言う。 そうして僕が嫌なやつになっていると、ヒロシが僕をたしなめる。そんなこと言っちゃダメだ! って。 僕が反省して落ち込んでいるとアカネちゃんが優しく慰めてくれる。 彼らはそれぞれのキャラクターを持って、僕の良き友人でいてくれた。 僕が成長するにつれて、彼らも成長していった。 いつしか姿は見えなくなったが、相変わらず僕の側にはいてくれた。 イジオは喋ることが少なくなり、いつも隅っこでイジケて泣くことが多くなった。 ヒロシは暴力的になりいつも怒るようになっていた。過激な発言も多かった。 アカネちゃんはいつもイジオを慰めていた。彼の肩を抱き、優しい言葉を投げかけていた。 僕もアカネちゃんと一緒にイジオを慰めていた。 この頃、僕は結構ないじめを受けていて荒んだ生活をしていた。 家庭環境もひどく、学校にも家庭にも居場所がなかった。 支えだったのは妖精三人だけだった。
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