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そこに住まうモノと日々の活計《たつき》
1
目覚ましのアラーム音が二日酔いの頭に響く。布団を頭から被りかけて思い直し、矢追一祢は重い体を起こした。
足元で丸まる雉猫の玉尾に布団をかけ、頭痛と吐き気にうんざりしながら、寝室にしている座敷を出る。
板張りの廊下は歩く度に軋む。板がたわんでいないだけマシなのだけれど、築百年近い母屋は手入れをしていてもどこかしらに歪みはあるらしく、家鳴りも酷い。
眉間に皺をよせながら、一祢は洗面所に向かおうとしたのだが、何歩目かでたまらず立ち止まった。床の軋む音は止んだが、今度は天井で家鳴りがした。
一祢が溜め息を漏らすと、返事のように家鳴りがした。
「どうした、じゃない。頭に響くから黙れ」
天井に向けて言い放ち、歩き出そうとするとまた家鳴りが一つ。
「まだ呑むのか? 昨日しこたま呑んでたろ」
途端に家屋が倒壊しかけているんじゃないかと思えるほど、天井、床、壁、柱などが鳴る。ただ一祢はそんな心配などないかのように舌打ちをして、こめかみを親指に押しながら、渋々といった風に漏らした。
「一本だけだ……」
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