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はっと我に返って薬を拾おうとして気が付いた。
薬の種類が多すぎて、何処に何が入ってたかさっぱり分からない……。
「新人さんなんだよね?」
「えっ?」
「こんなに重いカバン持ってそこら中回るの大変だねー」
「あ…スミマセ……」
喋りながら山辺さんはどんどん薬を戻していく。
「はいっコレで全部だよね?」
「え…どうして…?」
「前の担当の山田さん、いっつもよくお喋りしてたの。新しい薬がある時とかいつもカバンの中見せて教えてくれてたから、大体覚えてるんだよ」
すごい…俺より全然営業向いてるかも……。
「新人のうちはミスして覚えるんだよ!あたしなんか今でもミスするからしょっちゅう怒られてるけど……一番酷いのはねー社長の頭にお茶かけちゃってー」
……俺が落ち込んでいたのを、見透かして話をしてくれたんだろうか。
山辺さんと何度も会ううちにその推測は確信に変わっていった。
笑顔が可愛くて、明るくて、
いつも人の事を考える人。
……気付いた時にはもう好きになっていた。
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