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それは、突然やってきた。
澄み渡る秋空に吹く、一陣の風のように。
わたしの心を、どうしようもなく揺さぶっていく。
部活の帰り道だった。
夕暮れの校門を、友達と3人で潜り抜けようとしたその時。
突然、声をかけられた。
「あのっ。」
見知らぬ男の子が立っていた。
一緒にいた友人達も、見覚えがない様だ。
多分、1年生。
まだそれ程よれてない制服を、綺麗に着こなしている。
「笹中芽衣(ササナカ メイ)さん。
少しだけ、いいですか?」
いくら思い返しても、見覚えがない。
「わたし?」
その男の子は、少し緊張気味に頷いた。
「メイー。私たち、先にいってるね。」
と言って、一緒にいたユッキーとアコちゃんはわたしの背中をバシっっと、叩いた。
何なんだ?
マジで痛いし。
何だろ。
本当に見覚えない。
「少しだけ。
歩きながらでいいんで、お話しできませんか?」
わたしは、こくんと頷き、その見知らぬ男の子と一緒に歩き始めた。
彼は、言葉を探す様に少し俯いている。
どこを見ていいのかわからなくて、わたしも、少し俯いて歩き続ける。
「・・・。
すみません。困ってますよね?」
彼は、苦笑いを浮かべた。
彼の髪が風にサラリと揺れる。「オレ。1年1組の弘崎朗(ヒロサキ アキラ)っていいます。」
やっぱり一年生だ。しかも、特進クラス。
ますます見覚えがない。
「どこかで話したこととかあったっけ?
ごめんね。わたし、顔覚え悪い方だから・・。」
彼は、慌てた様子で首を振る。
「いえっ。
お話しさせていただくのははじめてです。」
話し方、キレイだなぁ。丁寧で、正確で。
頭良さそう。
特進クラスだしね。
ますます、接点が浮かばない。
「わたしに何か用事?」
彼の方に目をやる。168㎝のわたしと同じくらいの目線。
整ったキレイな顔立ちが少し強張っている。
「お家。この近くですか?」
家?
うちの家族に用事、かな?
「家は、ここからなら歩いて10分くらいだけど・・。
うちのお兄ちゃんズの知り合い?」
わたしには兄が2人いる。
2つ上で大学1年生のハル兄と、4つ上で大学3年生のカズ兄。
彼の頬が少し赤く染まる。
「いえ。
そういう訳ではないんですけど・・。」
彼は目線をわたしに向け、ためらう様に少し目線を外した。
「嫌じゃなければ・・・、家まで送らせてもらってもいいですか?」
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