1 芽衣

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それから2人で、なにも話さずに歩いた。 彼は、時々何か言葉を発しようとわたしに目線を向けるけど、目が合うと気まずそうに目線を逸らした。 夏の終わり。 昼間はまだ熱いけど、このくらいの時間は気持ちがいい。 次の角を曲がると、家まであとほんの少し。 「・・・あの。 家、もうすぐそこだから・・。」 「じゃあ。」と言って角を曲がろうとしたその時、彼に腕をハシッとつかまれた。 驚いて振り向くと、顔を真っ赤にした彼がいた。 彼は「すみません。」と言うと、バッと手を離した。 「笹中芽衣さん。 あなたの事が好きです!」 彼は、わたしの目をまっすぐ見つめてそう言った。 「中々言い出せなくて。 こんな所まで来てしまって、すみませんでした。」 彼は、小さな紙切れをわたしに手渡した。 「もし、嫌じゃなければ、連絡ください。 オレの事、知ってください。」 彼はそう言って、元来た道を早足で戻って行った。 何だ?これ。 顔が熱い。高熱でも出たみたいに火照っている。 わたしの手の中で、小さな紙切れが生き物の様に息づいている気がした。
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