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ポケットに入れていたスマホが、短く振動する。
その度に、ビクッと画面を確認する。
さり気なく。
何気ない仕草を装って。
普段は、こんなにスマホを見る事はない。自分の部屋に放りっぱなしにしていることの方が多いくらい。
だからなのか、さっきから妹たちが訝しげにチラチラと視線を投げかけている。
2つ年下の双子の妹、藍(あい)と紅(べに)。あいつらにだけは気づかれたくない。
オレがスマホを手放せないでいる理由を。
これ以上リビングに居ると危険な気がして、早々に自室に引き上げることにする。そう思ってソファーから立ち上がろうとした時、短くスマホが震えた。
反射的に画面を確認すると、それは期待半分諦め半分で待っていた相手からのメッセージで。
思わずにやけそうになる頬を引き締めて、そそくさとリビングを出た。
ヤバイ。顔が熱い。
まだ、いい返事か悪い返事かもわからない。
でも、反応が返ってきた。それだけなのに。
嬉しすぎる。
思わず頬が緩む。
スマホをポケットに戻し、二階への階段を昇ろうとした時、後ろから両腕をグッと掴まれた。
「アキラちゃん~。
なーんか、ソワソワしてない~?」
と、右から藍。
「スマホばーっかりみてるしー。
しかも。今、ちょっとニヤついてなかったー?」
と、左から紅。
げっっ。
やっぱ、来たか。
「何でもない」と振り切って階段を上がったが、その後ろをツインズが小走りでついてくる。
「ねー。誰からのLINEー?」
「みーせーてーよー!
きーにーなーるぅっ!!」
シツコいツインズの追求を何とかかわし、自分の部屋にに滑り込みバタンとドアを閉める。
そのまま、ドアを背にズルズルとしゃがみ込んだ。
チラッと見ただけで中身までは確認できてないけど、それは彼女からのメッセージだった。
両手で顔を覆い、大きく深呼吸をする。
意を決してスマホを手に取り、メッセージを開く。
[笹中芽衣です。
今日。好きって言ってくれてありがとう。
あなたの事を少しずつ教えてくれますか?]
彼女からのメッセージ。
思わず、笑みがこぼれた。
短いメッセージだった。
彼女らしい。
温かくて、素直なメッセージ。
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