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なにしろ俺は長年封印されてたんで、軽くタイムスリップ状態。必死に現代に対応し、嫁に悦んでもらおうと必死である。
「む、着信か?」
スマホを見れば、ニュースの新着情報。
便利なものだスマホ。俺はSNSで大蛇のコミュニティに入っており、現代の情報収集に使っている。
「最近通り魔事件発生中。いずれも被害者は大蛇のため、皆さん警戒されたし……か。ふむ。物騒なことだ」
つぶやきつつ、街の中心部を離れる。畑の多い地区に入ったところで、あるものを見つけた。
ウサギが罠にかかっている。
本物ではない、妖だ。配下がやってるパン屋に入ったバイトだな。農家の害獣駆除用の罠にかかったか。ドジなことだ。
助けてやった。ウサギは大変感謝して、
「ありがとうございます。貴方様は蛇神様でらっしゃいますよね?」
「ふむ。完璧に人間に擬態できてると思ったが、これほどイケメンなら神と分かってしまうか」
「…………。えー、その、一応恩返ししたいのですが……」
別にいらんと言っても食い下がってきた。
「ならば。お前、恋人か妻はいるか」
「おりますが?」
「ふむ、教えてほしいことがある。今の女子が連れて行ったら喜びそうな場所が近くにないか?」
「あります! ご案内しますよ!」
ウサギの妖が案内してくれたのは、一面の花畑だった。休耕中の畑に花の種を植えてあるのだ。景観もいいし、緑肥にもなる。
「ほう! これはすばらしい」
「……ええ、彼女もこんな花畑が好きでした」
俺がどこから見るのが一番いいかと背を向けて歩く間も、ウサギがつぶやいている。
「そう……最愛の女性でした。でももういない。食われてしまった。あの大蛇に―――!」
ウサギは正体を現し、怪物の姿になると飛びかかってきた。
鋭い爪が背中に食い込―――む前に、蛇の口がガキンと受け止めた。
俺の肩のあたりから頭が一個生えている。この程度なら一本で十分だ。全部出すまでもない。
俺はゆっくり振り返った。
「お前がこうすることは分かっていた」
「なっ、何だと……?!」
「ふう。このままでは話もできん。とりあえず静かにしろ」
神通力で動きを封じ、さらに強制的に人間の姿に変化させる。
「お前は最近の連続通り魔事件の犯人だろう。大蛇ばかり狙うのがその証拠。お前は俺の父に恋人を殺されたと思っているのだろう?」
「ああそうだ、許さない!」
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