タイトル→57577 *字あまり

5/5
前へ
/5ページ
次へ
「……さて帰るか。それにしても、嫁への土産はどうしよう。怒らせたから、手ぶらはまずいよな」  ちょっと考えて、花屋で花を買って帰った。  のんびり敷地の周りの結界を確認する。よし、異常なし。  警備につけてある配下が報告してきた。何匹か防犯システムに引っかかったらしい。いつもの父に恨みを持つ者からのとばっちりだ。妖狐警察に連絡するよう命じた。  家のドアを開ける。愛しい嫁の足音がした。数時間前に出かけたばかりなのに恋しくてたまらないのは、我ながら重症だと思う。だが長年独りで封印されてたことを思えば仕方あるまい。  彼女は律儀にも出迎えてくれる。「勝手に嫁扱いするな」と言う割に、こういうことするんだから天然だ。俺をつけあがらせるだけだと学習したほうがいい気もする。  ……悪者にされ、ずっと孤独だった俺にもやっと家ができた。彼女が俺の帰るべきところ。  もうあの孤独な牢獄には帰りたくない。  優しく微笑む彼女に、俺も微笑み返した。 「お帰り」 「ただいま」
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加