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「……さて帰るか。それにしても、嫁への土産はどうしよう。怒らせたから、手ぶらはまずいよな」
ちょっと考えて、花屋で花を買って帰った。
のんびり敷地の周りの結界を確認する。よし、異常なし。
警備につけてある配下が報告してきた。何匹か防犯システムに引っかかったらしい。いつもの父に恨みを持つ者からのとばっちりだ。妖狐警察に連絡するよう命じた。
家のドアを開ける。愛しい嫁の足音がした。数時間前に出かけたばかりなのに恋しくてたまらないのは、我ながら重症だと思う。だが長年独りで封印されてたことを思えば仕方あるまい。
彼女は律儀にも出迎えてくれる。「勝手に嫁扱いするな」と言う割に、こういうことするんだから天然だ。俺をつけあがらせるだけだと学習したほうがいい気もする。
……悪者にされ、ずっと孤独だった俺にもやっと家ができた。彼女が俺の帰るべきところ。
もうあの孤独な牢獄には帰りたくない。
優しく微笑む彼女に、俺も微笑み返した。
「お帰り」
「ただいま」
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