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「……素敵な友達に会うためだよ!」
これ以上ないくらいの満面の笑顔で彼はそう言った。そして、迷うことなくヴァイスは向こうの世界へと飛び込んで姿を消した。
その答えの意味が、あまりよく理解出来ていなかった。素敵な友達に会える可能性なんて、あまり無いだろうに。
でも、ヴァイスらしい理由だった。どうか来世では、彼に素敵な友人が出来ますように。
行ってらっしゃい。
門の向こうに消えていったヴァイスを思いながら、もう届かない見送りの言葉を心の中で呟いた。
ふと俺は、机の上に置かれたままの羊皮紙を見た。受け取った時と何ら変化のない羊皮紙と、来世の願いが書かれた羊皮紙。俺は文字列の一番最後を見た。
「……あぁ、なんだ。そういうことか」
それを見た俺は、思わず笑みを零した。
ようやく、ヴァイスが来世に期待する理由が分かった気がする。そして、俺に転生を求めた理由を。
置きっぱなしの羊皮紙を手に取って、俺は目を閉じる。
この世界を旅立った彼の『さよならの理由』が、そこには綴られていた。
──メランくんと友達になりたいから。
彼の羊皮紙の最後には、綺麗な文字でそう書かれていた。
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