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羊皮紙には、来世の自分について書かれている。数多の項目が並んでいるが、俺は何一つ印をつけていない。もちろん、来世についてあまり興味がないからだった。
「んー、じゃあすっごいお金持ちにしちゃうとかどう?」
「馬鹿、その分来世での寿命が減るんだぞ。いいのか?」
「うーん……」
万年筆をくるくると回しながらヴァイスが眉間に皺を寄せる。
「でもさ、短い人生の中で派手に過ごすのも面白そうじゃない?」
「そうか?」
「お金があれば退屈しなくて済みそうじゃん。早く死ぬ運命になるなら、それまで好き勝手生きればいいんじゃないかな」
「……まぁ、確かに」
退屈な人生をダラダラと過ごすよりは、金持ちになって豪華な生活を送った方が良いかもしれない。どうせ生きる意思もあまりないんだ。来世があるのならば、自分の好きな事をして豪勢に生きてみたい気もする。
「よし、じゃあメランくんも来世の自分のオプション考えよ!」
「いや、俺は別に……」
「いいから!」
温かい笑顔を俺に向けながらヴァイスが万年筆をもう一本手渡してくる。それを渋々受け取り、俺は羊皮紙と向き合った。
「えーっと、まずは性別かな?」
「男がいい」
「わぁ、即答」
「自分が女になったところとか想像できない」
「あ、それは分かるかも」
「お前は女の姿似合うんじゃね?」
「えぇっ!?」
冗談混じりに言ってやれば、ヴァイスが心底驚いたように目を見開いた。ヴァイスは一度鏡で自分の顔を見た方がいいと思う。男にしては肌が白く、顔立ちだって女性寄りだ。目もぱっちりで、髪だって指通りが良さそうだ。女に生まれ変わっても上手くやっていけそうな気がする。まぁ、中身が意外と男っぽいから難しいかもしれないが。
「じゃあ、性格は?」
「そんな項目もあんのか。今と変わらずでいい」
「僕も今のままでいいかなぁ。ちょっとクール系目指したいみたいなところはあるけど」
「ヴァイスがクール……?」
「何その信じられないみたいな視線!」
「いや、悪ィ……」
大きな目を吊り上げてヴァイスが睨んでくる。この世界でヴァイスと出会ってからそこそこの時間が経つが、どうにもクールとはかけ離れた人物だ。
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