七十二候

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 やがて昼夜問わず、コロコロ、リリリ、リーンリーンと合唱が鳴り響く。遠くの山の木々が、少しずつ黄色や赤や茶色へと変化していく。落葉掃除が大変。でも、思わぬところで出会う、地面に散らばる実や小さな傘が楽しみだったりする。私は熊手片手に、外へ飛び出した。  季節は秋から冬へと変わりつつある。  大地に白いものが覆うようになってきた。  空はどんよりした鉛色に変わり、鮮やかな色の半円の、その姿が現れる回数が少なくなっていく。  川に黒い影が遡り、冬ごもりの前の晩餐とばかりに大きな獣が姿を現し、山を駆ける獣の枝のような角が落ちる。ケーンケーンとつんざくような声をあげる鳥が、その鮮やかな姿をよく見せるようになってきた。  やがて一年が終わろうとする。季節は確実に冬から春へと移ろうとしている。  私達が次の世代に繋げるもの。  それは、西暦から宇宙暦に変わる頃より、地球から、この場所に保護された生き物と遺伝子から蘇らせた生き物達。その多くは、音と映像だけしかないのだけど。  そんな生き物に合わせて人間は、衛星のドーム内の昼夜、温度、水を調整している。  ――そう、これは、青い星と称えられた地球を、徐々に赤黒い星に変えてしまった人間のツケ。  ……あるいはエゴ。  私はそう思えて仕方ない。                  
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