隣の人は

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 なんと、川村は写真家なのか。で、お前さんはその男の担当者なのか。  その男が、この辺りの風景が気に入って、よく撮影に訪れていたが、近くに宿がなくて困っていて、ちょうど、お前さんの親御さんらが、源蔵の屋敷を今後どうするか思案しておって、源蔵の屋敷を貸すことになったと。  なるぼど、なるぼど。  ああ、わしの家の周りを含め、辺りを探してみるとな? そうするがええ。  そうじゃ。源蔵の庭の端っこ、注意するがいい。あの庭の辺りは滑りやすいうえ、その下は急な斜面になっておる。源蔵も、あの辺りで足を滑らせてしもうたからなぁ。  あの辺りは、山菜がようなって、源蔵も爺さんも、それを肴にしてよう呑んでおったのじゃが……  そこも探してみるとな。ならば、わしの畑の端の大岩の辺りから、大廻りして行くんじゃぞ。  ああ、便所なら、自由に使ってくれ。なんなら、縁側も自由に使うがいい。    ……やれやれ、大変な事になったの。とりあえず、縁側を開けて掃いておこう。茶も沸かしておこうかね。  仏様に氏神様、どうか、どうか、あの男、無事でありますように。源蔵、爺さん、あの男を助けてやっておくれ。  川村とやら。お前さんを怪しいと思っておったこのわしを許しておくれ。     
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