彼岸の狭間で

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 山根は閉じていた眼を、ゆっくりと開けた。金色の虹彩の真ん中に針のように細い黒。それは猫の眼そのものだった。  山根は右の人差し指を立てながら、参道の入口にある鳥居へと歩き、公園へと引き返す。そんな山根の動きに合わせて、いくつもの陰が珍しいものをみるかのように、遠巻きについてくる。  山根はついてきたその陰に近づき、一つ一つ声をかける。だが、声をかけた陰の言葉は、どれも文としては未熟で、理解するのが困難だった。  と、その陰らが、怯えだした。  山根は立ちあがり、陰らの視線を追った。  そこには、山根よりも一回り大きく、ねっとりとした物体をまとったモノがいた。 「おい、お前。ここに集めた魂は、俺様の獲物だ。邪魔をする気か?」  「参道の異変の元凶はお前か」  山根は怯える陰を背後に身構えた。  身構えると同時に、山根の上半身が猫と虎を足して二で割ったような様に変貌し、巨大な陰に向かって繰り出す。  鋭く伸びた爪が、確実に巨大な陰をとらえていく。 「まて、取引をしよう。お前はヒトの魂を喰らうアヤカシだろう? どうだ、ここに集めた魂の半分お前にくれてやろう。  お前も魂を喰わねば、存在できないのだろう? だから、見逃せ」     
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