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「断る。確かにオイラはヒトの魂を喰らうアヤカシだ。だか、オイラが喰らうのは、お前のようなモノと決めているのでな」
巨大な陰は身体を震わせると、細長い陰に変貌し、参道の外へと退散しようとする。
「逃がしはしない」
山根の腕が細長く変貌した陰を捕らえ、鋭い歯で頭に見える部分を噛み砕いた。
吐き気のするような感覚が、と同時に相反する甘い感覚が明るい笑い声と共に山根の内に広がった。
それは刈った陰の、ヒトであったときの本人すら忘れてしまった記憶。
山根は捕らえた陰の、明るい笑い声に包まれていた日々の記憶のカケラに涙をこぼし、捕らえた陰を全て口の中に押し込み、人の姿に戻った。
遠くからそれを見守っていた陰達が、山根の側に集まってきた。
「彷徨う幼き魂よ、恐い目に合わせてしまってすまなかったな。だが、オイラができることはここまでだ」
山根の言葉を合図に、参道はいつもの情景に戻り、陰達は蝶に変わり飛び去っていく。
だが、その中の一つが山根の側から離れようとはしない。
「……ああキミはアレがヒトであった時に、捕らわれた子だね。アレに隠されたキミの身体、キミを探している人達に見つけやすくしてあげることしかできないが、それでいいか?」
蝶は山根の身体を一周し、参道の外に向かって飛び出した。
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