待ち合わせ

1/4
306人が本棚に入れています
本棚に追加
/77

待ち合わせ

×月二十四日 From : けんと To :   高遠    一夜だけ、貴方を下さい  普段利用しない駅の改札を出て右手に進めば、大学生が複数ぞろぞろと固まって歩いていた、北口には大中小の私立の学園がある、清く正しい彼らが横断歩道橋を降りる後姿を極力見ない様に、平田 健斗(ひらた けんと)はレンガ造りの広場に進み平日の昼下がりに照らされて、熱を帯びた木のベンチに一人腰掛けた。  携帯電話を取りだし液晶画面に映る時刻を緊張しながら見つめた、わざわざ秒を刻む時刻機能で一秒ずつを眺めていた、あと三分、その行為も無意味だと健斗は手提げ鞄の中から文庫本を取り出した時だ。  「けんとくん? 」  ふと文庫本に影が差したと思えば健斗は何も考えずに顔を上げた、青い空を背景に綺麗という例えしか見つからない男性が、スーツ姿でベンチの傍に立ち止まり健斗を伺っていた、彼を見た健斗は瞳孔が開いた。  「高遠さんですか? ・・・はい、そうです」  「・・・待たせた?・・・ああ、改めて初めまして、いつもの、高遠です」  「いいえ、今来たばかりです、こちらこそ初めまして」  健斗は立ち上がり十歳は年が離れた高遠に頭を下げた、先ほど見た彼の姿に心臓の鼓動が煩い位に高鳴り、健斗は頭を上げても高遠を直視できずにいた、会話が途切れた所、そこを彼はさり気なく歩き出した。  「平日で良かった? わざわざ来て貰ってごめんね、俺は会社がこの駅の近くだから、気を遣わせて」  「いえ、逆に近い所でいいんですか、会社の方も大丈夫ですか」  「俺、こう見えても社長だから、自由に生きてる、今日はこの後自由、あっ、そうだ会ったら言いたい事があったんだ、ほら、こっちだよ・・・あのさ毎日夜遅くにメールしてごめんね」
/77

最初のコメントを投稿しよう!