最終章 エニシダさんと彼の開かれた部屋

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わざわざ連絡を取って、約束してここで待ち合わせた。以前二人で話し合いに使ったことがある、エニシダさんちに近いちょっと小洒落たカフェ。 家事サービスを辞めてエニシダさんの部屋に住み込むようになってから、青山くんと顔を合わせるのはわたしのバイト先のファミレスに彼が来る時くらいになっていた。それ以外、わざわざ誘い合わせて外で会うような必要もないし。 とそこまで考えて、でも思えばセクシーサービスで共同事業を始める前、お互いただフリーのライターだった頃には普通に約束して外で飲んだり。何の用ってわけでもないのにだらだらとLINEしたりすることもあったのにな。そう思うと、やっぱりわたしたちの間も自然と変化してるんだ。 そう頻繁とは言えなくても用事のあるなしなんて気にも留めず連絡を取り合ってた。そういう何でもないただの友達だったわたしと彼の仲は、もしかしたらもう戻ってこないのかもしれないな。 改めて実感すると思いのほか寂しい。無論異性同士とはいえ、友人と恋人は全く別もの、違うジャンルの存在だ。エニシダさんと付き合い始めたからって、わたしが純然たる友人である青山くんと会ってはいけない理由なんか別にないんだけど。     
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