0人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
私は今、人の頭と建物に囲まれた青空を見上げている。
美しい青空だ。
背中には硬いアスファルト。
本来であれば熱く焼けているであろうそれの温度を、私の体はすでに感じる事が出来なくなっていた。
さっきまで焼けるように熱かったはずの腹も、今は感覚が殆どない。
体にもまるで力が入らない。
色々なものがどんどん遠ざかっていくのを感じる。
いきなりの事で何が何なのか。
確か、スクランブル交差点を横断している最中だったはずだ。
腹に激痛が走ってそれから……。
ふと、私と青空の間に、黒い影が割り込んできた。
その影は私の目の中で滲み、青空と溶け合おうとしている。
「先輩、私信じてたんだよ」
黒い影は悲しそうにそう言った。
最初のコメントを投稿しよう!