決戦の土曜日

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「ほら、碧ちゃんも、チョーダイ」 ニコニコと穏やかな微笑みを浮かべて、私にオネダリをしている直樹サン。 違うよ、直樹サン。 そこは、 碧ちゃん、早くチョウダイって言ってごらん? 可愛くオネダリしてごらん? からの らめぇーーーーーーーーっ!!! が、希望なんだけどなぁ……。 「……まぁそうか、相手は碧ちゃんだしな、どうせ他事でも考えてるに違いないか……」 直樹サンが目の前でなにやら呟いたと思ったら、私の手元のドーナツを私の手と一緒に口元に運んで、食べかけのドーナツに口を寄せてガブリと食らいついた。 なんだか、ボーっとスローモーションのように見ていたのだけど、目の前の光景のどこかが私の胸に突き刺さってドキドキしてきた。 相手が湯沢っちだった頃だって、私の手元のドーナツを勝手に奪って食べてしまうヤツだったはずだ。湯沢っちというのは、そういうヤツだ。 でも、私の手からドーナツだけ奪ったんじゃなくて、私の手ごと自分の口元に運んでいく様子が、今までとの違ちを見せてくるみたいで、ドキドキした。 モグモグと咀嚼して、ゴクリとドーナツが直樹サンの喉元を通過していく様子をジッと観察して、喉ぼとけの動きに男を感じて私も意味もなく口の中に溜まった唾をゴクリと飲み込んだ。 「怒った?」 イタズラが成功した中学生の頃から変わらない意地悪な顔で、だけど意地悪の中にそれだけじゃない微笑みを浮かべて聞かれて、いつもだったら、怒ったというリアクションをするところだけれども、なんだか調子が狂って首を左右に振った。 自分の顔が熱い気がする。 「柄にもなく緊張してるんだろ。江口とかってヤツの彼女に殴られたらどうしようとかって」 「別に……」 まったくの見当違いもいいところなんですけどっ……。 「大丈夫、大丈夫。俺がちゃんと守ってやるから」 直樹サンの手が私の方に伸びてきて頬をナデナデしながらそんな風に言われて、やっぱり顔が熱くて胸が無駄にドキドキして、照れ隠しに 「ユザゴロウさん、頼りにしてるにゃんっ!」 などと、茶化したついでに憧れの新藤さんのように猫化してみた。 たっぷりと三秒ほど動きを止めた直樹サンは 「おー、ヨシヨシ、ほー、ヨシヨシ」 興奮した様子で頬を撫でていた手を私の顎に伸ばしてゴロゴロさせながら狂ったようにユザゴロウ化してくれた。 なんか、上手になってるね☆
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