私の天敵のこの人は……

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新藤さんのご主人様である酒井課長にお見合いについて軽く打診されてから数日後、終業時間とほぼ同時に酒井課長が営業部とは別フロアにある総務部に現れた。 誰もが生温い目をして酒井課長が新藤さんに話しかけるのを待っていたのだけれども、新藤さんと酒井課長が軽くアイコンタクトを取ったと思ったら 「碧ちゃん、今夜、暇って言ってたよね? とっておきの大衆食堂で一緒に夕飯を食べよう☆」 と、ほぼお断りできないお誘いを受けた。 「課長がご馳走してくれるってー! 一番高いの食べようね☆」 などと言われても……大衆食堂で一番高いのって、たかが知れているのではという疑問。 あとさ、課長が私にご馳走するってことは、結局酒井家の家計からの出費だから新藤さん的に喜ばしいことなのかどうなのか……。 嬉しそうに笑って、私の右腕を新藤さんの左手がガッツリ掴んだ。 そして、新藤さんは課長に向かって右手で敬礼をして 「それでは後ほど、いつものお店の前で」 などとやっている。 アルコールが入っていなくても、ちょっと壊れている様子に、総務部の皆様がニヤニヤと笑っている。 きっと、明日の私は人気者だ。 もちろん、新藤さんと課長と一緒にどんな面白いことをしてきたのかという話を聞きたいがために。 「クッ。バカタレめ」 目を細めて新藤さんに愛のあるバカタレ発言を残して課長も 「じゃーな。お騒がせしましたー」 と退散していった。
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