私の天敵のこの人は……

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気が進まないけれども、長い物には巻かれておくのは大事だと思うので、渋々ながら新藤さんに連れられて大衆食堂とやらに向かった。 「サンクチュアリの方にあるんですか?」 「そうそう、私も課長に連れて行ってもらうまでそんなところに大衆食堂があったなんて全然知らなかったんだよね。なかなか素敵なお店だよ。手書きのお品書きと演歌と、シーズン中は野球中継も」 手書きのお品書きと演歌と野球中継。 そんな店がこの界隈にあったとは! あっても不思議じゃないけど、酒井課長の見た目からはミスマッチ! 新藤さんは何でもありな感じがするけど、それでも妙齢の女性が好む感じとは違うような……。 でもまぁ、この人と酒井課長だったら、オシャレなカフェよりも似合ってる気はするけど、見た目だけだったら想像つかない。 隣を歩く新藤さんを見て、中身はかなりアレな人だけど、普通の会社員にしか見えないもんな思った。 憧れの人だからという欲目もあるとは思うけど、ステキ夫婦だもんなぁ。 私と新藤さんが件の大衆食堂の前に佇むイケメン風味の酒井課長と少々小太りの男性(コブさんでいいかな?)が見える位置まで歩いていくと、向こうもこちらに気が付いたらしく、酒井課長が嬉しそうに笑った後で小さく手を挙げた。 隣のコブさんは、酒井課長がイイ体をしているから余計にコブさんっぽい雰囲気だ。 近寄ると、自分で心の中で命名したコブさんというニックネームが素晴らしくお似合いだということに気が付いた。 笑ってなくても笑っているような細い目は、頬のお肉と腫れぼったい一重瞼によってできているようだ。 笑ったら、目がなくなるだろう。 驚いたら、目が大きくなるだろうか。 「碧ちゃん、いい? あの人をケチョンケチョンにするのがミッションだからね! あの人のお父さんの社長さんにちょっと息子を叩き直すぐらい強烈な相手とお見合いさせたいって言われたみたいだから☆」 だから、そういうの、どうして直前まで伏せておくんですかね? そして、ものすごく楽しそうな顔で私を見るの、やめてくださいよ。 見た目が癒し系のコブさん、タイプじゃないし…… 私よりも強烈な人は新藤さんなんだけど……
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