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自販機まで歩いて、お茶でも買おうかと思ったら、私が小銭を取り出そうとしている間に直樹サンがさっさとお茶を買って渡してくれる。
なんで私が買おうと思ったモノが分かるのだ。
このストーカーめ……。
今まで気が付かなかったけれども、そういえばこの人、私の好みを熟知しているよね……。
「ありがと。つかぬことを聞くけど、これだけ自販機がたくさんあった中でどうしてコレを買ったの?」
「碧ちゃんだったらコレだなって思ったから」
ペットボトルを受け取りつつ聞いてみたら、こんな返事。
分かったような、分からないような、曖昧な返事なのに、直樹サンの顔には迷いなど一切なくて、いっそ清々しいくらいに当たり前感が醸し出されている。
「じゃぁ、私が直樹サンの分を選んであげる」
自分の小銭入れから硬貨を取り出して、三台の自販機で売られている飲料水を順番に眺める。
ど、どれだ?
紅茶?
コーヒー?
お茶?
水?
レモン系?
炭酸?
ここはウケを狙って、ヨーグルト味のコレとか?
いや、違うな。
直樹サンの顔が心持ち、嫌がっていた。
むしろ、嫌がりそうなモノを飲ますべき?
だって、元天敵だから☆
う~ん、迷う!
エナジードリンクで元気になられても困るから、これは却下だし……。
「どれがいい?」
「碧ちゃんが選んでくれるんじゃなかったのかよ」
笑われてしまった。フンっと鼻で笑ったけど、目が優しい……気がする。
きっと気のせい。
「エナジードリンクだけは違うと思うんだけど」
「エナジードリンク飲んで碧ちゃんを襲ってもいいぞ」
「ドーピングじゃん! そんなモノに頼らないとダメなんだ、可哀想に……」
「おいこら、哀れんだ目で見てくるな! 大丈夫だっての。絶倫は無理なだけで」
「……(可哀想)……」
「三か月後までに鍛えておくから!」
「金トレ? ちがうか、チントレ?」
「……碧ちゃん、女の子の口からそんな言葉って……」
「興奮しちゃった?」
「まーな」
「変態ッ!!!」
というわけで、可哀想な直樹サンにはエナジードリンクを差し上げた。
「これ、どういう意味だよ」
「チントレに対する応援の気持ちです。なんならお手伝いしようか?」
「いらねーよ!」
「ざんねーん☆」
「碧ちゃんの頭の中が残念だろ」
座布団一枚!
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