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一同がタマゴを剥き終わり、無言で塩を時計回りに次々とリレーしてモソモソとゆで卵を味わっていたら、店内に男性客が走って入って来た。
爽やかな見た目のスーツ姿のサラリーマン。
黒くてサラサラの髪の毛、整った顔立ち。
酒井課長は雰囲気イケメンな感じだけど、こっちはもうちょっとイケメン要素が高そう。
なんてのん気に眺めていたら、我々のテーブルまで来てテーブルに片手をバンって叩いた。
「碧ちゃんっ!!! 酷いよ! 俺って男がありながら、どうして見合いなんてしてるのさっ!!!」
えぇっ!?
誰!?
なんで私の名前!?
下を向いて肩を震わす酒井課長を見て、これが仕組まれたものだとは理解したけど。
こんなイケメンをこんな風に出してくるとは……。
「俺がふくよかな体型じゃないのがいけなかった? ゆるキャラとか癒し系みたいな体型じゃないのがいけなかった?」
えぇっと、コブさんをチラ見して私に問いかけるイケメン、オブラートに包んでいるようでいて、軽くコブさんをディスってるよね?
「それとも、年齢? 碧ちゃんはずいぶん年上の男の人が好きなの?」
ただの年上ではなく、ずいぶんの部分にかなり力が入ってましたよね?
「もしかして、俺がただのサラリーマンだからダメなの? 治安の悪い海外に転勤があるかもしれないから? 将来社長とかになる感じじゃないのがダメ? だったら、俺、頑張って会社を興して社長になるよ!!! 俺じゃダメなの?」
やりすぎでしょ、このイケメン。
軽く引くよ。
この茶番。
と、思っていたら、イケメンがポケットからなにやら紙を取り出して広げて見た後でまた畳んでしまった。
それから首を傾げて入り口の方を見る。
みんなつられて入り口を見たら、ナイスなタイミングで入り口が開いて若い男の子が走って入ってきた。
嫌な予感しかしない。
だって、酒井課長がプルプルしてる。
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