私の天敵のこの人は……

13/19
前へ
/207ページ
次へ
「残念なイケメン!」 「年下純情ボーイ!」 茶番は続くよ、どこまでも…… 台本通りに二人が顔を見合わせてる。 と、そこへ、お店の扉が開いて会社の同僚っぽい雰囲気を漂わせた男女が入店してきた。 「……」 「……」 「……」 「……」 「……」 「……」 私とコブさん以外のメンバーと入店してきた男女の間で一瞬、微妙な空気が漂った気がした。 「のび太だ」 コブさんがボソッと入店してきた男性を見て呟いた一言のせいで、微妙な空気が更に危険な色に染まった。 それ、言ったらダメなヤツだと思う。 空気読んでくれよ! ツボるから! 本当にツボるから! 残念なイケメンも年下純情ボーイも酒井夫婦も下を向いてプルってるじゃん。 もちろん、私もプルった。 「隣の人はしずかちゃんじゃないな」 ひどーーーーーーーい! 「ぽっちゃりした野口さんっぽい」 くっくっくっ…… コブさん、混ぜるな危険です! それは、混ざってます! そして、髪型しか似てないと思います! コブさんは、人を見る目がないかもね。 ぽっちゃりした野口さんとコブさんに評された女性は、天使の輪ができるぐらい健康的で艶のある髪の毛だし、つぶらな瞳の可愛らしい目と血色の良い頬で、根暗な印象とはかけ離れている。 微妙な空気を破ったのは残念なイケメンである。 「聡子さん! のび太君! 久しぶりっ!!!」 のび太君って言ってるよ、この人。 我慢できない様子で酒井夫婦が笑った。 「タカちゃんの知り合いかよっ!!!」 「課長、あの二人って、この店でときどき居合わせる人ですよね? まさかタカちゃんの知り合いだったとは……」 ……酒井夫婦、気が付いてますか? 茶番の台本の中の設定、残念なイケメンと酒井夫婦は面識がない設定ですよね? 「圭吾さん、あの人が山岸さんを振ってのび太さんを選んだ人ですよ」 「あー、そうなのか、タカちゃんはのび太さんに負けたわけだ、くっくっくっ」 「聡子さん! 一緒に夕飯、どうですか?」 「断るっ!!!」 残念なイケメンが聡子さんと呼ばれたのび太さんの隣の女性に声をかけたら間髪入れずにのび太さんが断った。 そして、我々から一番遠い席へと聡子さんとやらの腰を抱いて歩き去って行った。
/207ページ

最初のコメントを投稿しよう!

629人が本棚に入れています
本棚に追加