私の天敵のこの人は……

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酒井課長が予告通りに夕飯をご馳走してくれたので、新藤さんが 「ゴチになります!」 と酒井課長に敬礼したのを真似て、同じように 「ゴチになります!」 と私が続けたら、山岸さんと勇気君もそれに続いた。 が、コブさんはそこに続けなかったらしく、 「ノリが悪い!」 と皆に弄られていた。 多分、コブさんは弄られキャラではないと思われる。 それが弄られて嬉しそうにしているとは、M確定! 一度、SMクラブにでも行って、女王様に、いや嬢王様に生活態度を鍛え直してもらって欲しい。 うん、むっちりしたコブさんがボンテージ衣装をつけたら……肉に食い込むレザーハーネス……なかなかそれはそれでオツなのでは…… 「碧ちゃん、行くよ?」 目の前に急に現れた残念なイケメン、山岸さんにドキっとしたのは内緒にしておこう。 コブさんのレザーハーネス姿を想像していたのが一瞬バレたかと思ってドキっとしたけど、どうやら酒井夫婦が店を出たのに私がボーっと突っ立っていたから声をかけてくれたらしい。 あぁ、恥ずかしい! コブさんは車らしく、途中で別れて、我々は赤電車の駅へと歩いた。 酒井夫婦は、次はコブさんに本当のお見合いをセッティングするかと話し合っている。 アルコールを摂取して、是非とも台本を書いて欲しい。 ついでに、その台本を読ませて欲しいなと、二人が仲睦まじく話す様子に聞き耳を立てた。 「碧ちゃん、今度一緒に食事にでも行かない?」 軽い調子で横に並んで話しかけてきているのは、残念なイケメンの山岸さんである。 「あー……お食事会ってやつですか? 私、知り合いがあんまりいないんで、メンバーを集めるとか幹事とか無理ですよ」 そりゃ、山岸さんの会社の人たちとお食事会をするって言ったら、来たいという人はけっこういそうだけど、その人たちと一緒に私がご飯を食べたいかと言われたら、微妙。 家に帰って、らめぇーーーーーーーーっ!!! な小説や漫画に興じたい。 「碧ちゃんと二人でって意味なんだけど?」 頭の中で、らめぇーーーーーーーーっ!!! な小説や漫画を想像してしまっていたところに、山岸さんのこの言葉。 「ぬっ???」 変な声で変なリアクションをしてしまった。 ついでに変顔も。 「ブハッ!」 残念なイケメンの笑った風圧が、私の顔面にかかった! 残念なイケメンに笑われる牛田碧は、もっと残念!!!
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