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「相手はいるだろ」
右側からまた声が聞こえた。
「あー、お見合いとかってこと? いや、そういうのはいいや。もうさ、小説の中みたいに気がついたら知らない部屋で目が覚めて、イケメンが隣で寝てました、体の相性めちゃくちゃ良かったから結婚しよう、みたいな溺愛されたい!!! ってついたね、駅」
最寄り駅についたところで話は打ち切り。
実際、知らない部屋で目が覚めて隣でイケメンが寝てたら、自分がどうするかって分からないけど、やっぱりそこは逃げるのかも。
で、どうにかしてイケメンが見つけてくれて、どうしてあの日、逃げたんだってところからのお仕置き開始、フォー!
妄想、楽しいわー。
人の流れに乗って、改札を通り抜けて、いつも通りにサクサク歩く。
駅前から続く商店街はシャッターがおりているお店が多いけど、割と新しい洒落た昼はカフェーで夜はバーになるようなお店はまだやっている。
ひとりで入る勇気もないけど、イケメンにお持ち帰りしてもらうためには、こういうところで記憶をなくすぐらいに酔っ払わないとダメなんだよなぁと妄想の中の主人公になるのも楽じゃないしお金がかかるのだと考えてしまう。
「牛田妹、飲むか?」
「湯沢っちと飲んでも楽しくないでしょ。って、そういうところ、入ったことあるの?」
件のカフェー&バーを横目でチラリと流し見て、そのまま歩き去りつつ洒落たバーに行く湯沢っちが想像できずに隣を歩く湯沢っちをガン見してしまった。
「ないけど」
「ですよねー! 私も、そういうところに行くなら相手は湯沢っちじゃなくてイケメンがいいな。いや、違う違う、ひとりで行って酔いつぶれたところをイケメンにお持ち帰りしてもらいたい」
「……ビッチかよ」
「違うし! 朝起きたら知らない部屋で隣にイケメンが寝てて、逃げるように自宅に帰るんだよ! だけど、イケメンがどうやってか私を見つけ出して、お仕置きと称してあんなこととかこんなこととか……らめぇーーーーーーーーっ!!!って! 女のロマンだよ☆」
「……」
湯沢っちになら、白い目で見られたって平気だもんね。
とっくの昔に、らめぇーーーーーーーーっ!!! っての、見つかってるし。
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