私の憧れのあの人は……

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「うわー!」 目を輝かせながら同人誌を眺める新藤さんを温い目をして眺める私という図をご理解いただけるだろうか。 「行きつけの本屋さんには、売ってないんだよね、同人誌!」 そりゃそーだろ! 新藤さんの家があるのは、さびれた地方都市、その商店街の中の小さな本屋さんに充実した同人誌売り場があったら、一般書籍を置く場所がなくなるよ……。 温い目、再びである。 「迷うなぁ。王道だけど、サラリーマンっていいよね。だけど、ファンタジーな感じも捨てがたい。最近、騎士団にはまってるんだよね」 騎士団。 いいっすね。 私も好きですよ、新藤さん。 新藤さんは、騎士団長がお好きだろうか。 それとも、副官? いや、騎士団長と副官の絡みも捨てがたいかも。 そこは、王弟あたりとエリート副騎士団長。 いやいや、宰相とかもいいかも……。 「碧ちゃん、顔がだらしなくなってるよ!」 「はうぁー!」 まさか、新藤さんに顔がだらしなくなっていると指摘されるとは……牛田碧29歳、一生の不覚……。 私の変な雄たけびをニヤニヤ笑いでスルーした新藤さんは、じゃーんと言いながら同人誌を私の目の前に掲げた。 サラリーマンでもファンタジーでも騎士団でもない、どこからどう見ても…… 触手もの…… どう返事をすればいいのか、困る。 なかなか恥ずかしい表紙ですよね、それ。 女体に触手が這っている感じがかなりエロい。 触手に興味がなかったけど、ちょっと読んでみたいと思うようなエロさがある。 「この女の子、萌えるよね。どうやったら、こんな可愛くて萌える子が描けるんだろう、参考にさせてもらわなくちゃ」 だから、何の参考……? 「あとは、あっちでTL小説を買ってー♪」 素面でこれ、面白過ぎる!
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