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新藤さんと飲んでいて楽しいのは、話が尽きないところだ。
例えば、職場の人の話だったり、友達の話だったりしたら、ネタが尽きそうなものだけど、新藤さんが相手だとネタが尽きたらイマジネーションの世界の話で盛り上がればいいのだ、楽である。
「新藤さん、騎士団だったらどのポジションの人と付き合いたいですか?」
「えー? 騎士団長のオジサン、いや、若くして騎士団長に上り詰めたエリート騎士、違うなぁ。たたき上げの第3小隊の隊長かなぁ?」
元営業部営業3課の課員なだけあって、やっぱり第3ってところに惹かれるのかと心の中で笑ったのは内緒である。
新藤さん本人は、ちょっと酔っているらしく、暗がりでも分かるほどほんのりと頬が赤い。
可愛いのである。
そして、つぶらな瞳で私を見つめてきて、ちょっとドキっとする。
「碧ちゃんは? 眼鏡のドSが好きそう! ポジションはやっぱり副官?」
「あー、現実世界のドSは勘弁して欲しいですけど、想像の中なら眼鏡のドSに苛められたいですね。そんでもって、ドロドロに甘やかされてみたいです」
「苛められて甘やかされたいって、偏ってるよね、どっちかでいいとか思わないの? それとも、ツンデレ的な?」
ツンデレって言うか。
「いや、ギャップ萌えです」
「あー、分かる気がする」
うんうんと頷いている新藤さんだけど、絶対に分かるわけがない。
私生活では、ドロドロに甘やかされる一方のはずだ。
お弁当だって、愛夫弁当だし。
今夜だって、どうせ達成会が終わり次第、ここに課長がやってくるのは目に見えている。
時間を確認すると、そろそろ、課長から連絡が入る頃だと思われる。
「新藤さんが結婚してなかったら、腐女子仲間になりたいところなんですけどねぇ」
水だけになってしまったグラスを傾けて、ほんのりと味があるようなないような水を飲みほした。
まだ、水は冷たかった。
腐りきってない腐女子みたいだ。
「ダメダメ、私はもう『女子』じゃないから。貴腐人だから!!!」
私の憧れの人は、腐女子を卒業して、貴腐人らしい。
やっぱり憧れである。
「目指す場所は、汚超腐人だからね!!! 広報課員は、全力で汚超腐人を目指しましょうね!!!」
テーブルの上に載せていた両手を握られて、ぶんぶん振られて宣言されてしまった。
やっぱり、新藤さんは最強だ。
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