東京案内

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 東京の汚染を国は調べないから市民レベルでやるんだけど、そうなるといろいろ考えがあって中には悲しいかな軋轢も出てくることもあり得るわけだ。悲しいかな。国がやればそもそも国のやることがどれだけ信用できるかっていう問題もあるし、仮にできたとして、また国頼みかと言う不平も出てきたりする。そしてまとまらないうちに結局民間はあてにならないという、権力や権威任せの発想がに風切って歩き出す。個人がそれぞれ言う事に対して謙虚でないというのが個人の権利に疎い事の何よりの証拠だとすればいろんなことに合点がいく。  虚しい堂々巡りが六年半、僕の身近かのあちこちで起きている。  そうかぁと、中嶋さんは僕が岡山に留まるつもりだという返事にとりあえず納得したようだった。  中嶋さんのご実家は津山でしたね。  僕は中嶋さんに同調する。  そうそう津山。だけど誰も住んどらんの。山田さん、買って。  買うって、今言ったじゃないですか、ギリギリで来たんだって、  と言ったつもりで、うーんと唸ってみる。  今、多いんですよね、住む人がいないって言って困ってる家。  もう、大変よ田舎は。  東京もです。じゃあ、管理とか、どうされてるんですか?  だからこの前も行ったわよ。窓開けて、風通さないと痛んじゃうから。  ですよね。大変だ。  まあ、両親の世話はね、兄夫婦がしてるからまだいいんだけど。  施設かなんか?  そうそう。  ブライダルホールの突き出た屋根がほんのちょっと傾いたかもしれない太陽を微妙に隠して、食堂を横切る影の形を少し変えたような気もする。     
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