第3話

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「いつでも休んでいい」とは言われているのだが、そうはいかない。 少し離れたところにいるスズリは、投球機から発射される高速の球を、小さなナイフで確実に叩き斬っている。 ──あいつが休むまでは休まない! 「『あいつが休むまでは休まない!』とか考えてないよね?」 不意にスズリが口を開いた。 「エスパー?」 「なんか君ってそんなタイプそうだし」 無表情にスズリはこちらを見た。宙に浮くナイフが霧散する。 「休もう。僕も集中力がもたない」 「わかった。今のナイフ消して良かったのか?造るのに結構言霊を使うって聞いたけど」 そう。オレのように遺言霊で戦わない普通のキャスターには、使えるエネルギーに限度がある。 スズリはキャスターの中でも多い方らしいが、特殊霊刀召喚を連発はきついそうだ。 「問題ないよ。次はまた、別の訓練をするから」 「おっ!次はなんの訓練?」 声を弾ませてそう聞くと、生み出したナイフをピッとこちらに向けた。 「一対一の対決(タイマン)だよ」 ▽ 「ねぇ、ホントにやるの!?ナイフとか怖いんだけど!」 「安心して、刃をゴム状にしとくから」 「そんな器用なことできんのか」 お互い、十数メートル離れ準備運動。 「オレのパンチ当たっちゃったら?」 「限界までいくと推進器(スラスター)が逆噴射するようになってる」 当たっても威力はほぼ無いよ。と返すスズリは既に数本のナイフを生み出している。 グニグニと曲がる刃を確認して、軽く息を吐いた。 「始めようか」 「おう!」 スッと、スズリが腰を落とす。 背にまわした手を、水平に走らせた。 同時、顔面に向かって真っ直ぐに飛来する一本のナイフ。 裏拳で払う。その一瞬で、自分の拳で自分の視界を遮った一瞬で、スズリは眼前から姿を消した。 「上か!」 正解。大きく跳んだスズリは立て続けにナイフを連投。 片手に三本づつ。 驚愕すべきはその正確さ。 走り避けるが、その回避先までをも読み降ってくるナイフ。 「らちがあかねぇ!」 脚部の推進器(スラスター)を展開。風を置いていく速度で、降りてきたスズリに急接近。
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