0人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
「いつでも休んでいい」とは言われているのだが、そうはいかない。
少し離れたところにいるスズリは、投球機から発射される高速の球を、小さなナイフで確実に叩き斬っている。
──あいつが休むまでは休まない!
「『あいつが休むまでは休まない!』とか考えてないよね?」
不意にスズリが口を開いた。
「エスパー?」
「なんか君ってそんなタイプそうだし」
無表情にスズリはこちらを見た。宙に浮くナイフが霧散する。
「休もう。僕も集中力がもたない」
「わかった。今のナイフ消して良かったのか?造るのに結構言霊を使うって聞いたけど」
そう。オレのように遺言霊で戦わない普通のキャスターには、使えるエネルギーに限度がある。
スズリはキャスターの中でも多い方らしいが、特殊霊刀召喚を連発はきついそうだ。
「問題ないよ。次はまた、別の訓練をするから」
「おっ!次はなんの訓練?」
声を弾ませてそう聞くと、生み出したナイフをピッとこちらに向けた。
「一対一の対決だよ」
▽
「ねぇ、ホントにやるの!?ナイフとか怖いんだけど!」
「安心して、刃をゴム状にしとくから」
「そんな器用なことできんのか」
お互い、十数メートル離れ準備運動。
「オレのパンチ当たっちゃったら?」
「限界までいくと推進器が逆噴射するようになってる」
当たっても威力はほぼ無いよ。と返すスズリは既に数本のナイフを生み出している。
グニグニと曲がる刃を確認して、軽く息を吐いた。
「始めようか」
「おう!」
スッと、スズリが腰を落とす。
背にまわした手を、水平に走らせた。
同時、顔面に向かって真っ直ぐに飛来する一本のナイフ。
裏拳で払う。その一瞬で、自分の拳で自分の視界を遮った一瞬で、スズリは眼前から姿を消した。
「上か!」
正解。大きく跳んだスズリは立て続けにナイフを連投。
片手に三本づつ。
驚愕すべきはその正確さ。
走り避けるが、その回避先までをも読み降ってくるナイフ。
「らちがあかねぇ!」
脚部の推進器を展開。風を置いていく速度で、降りてきたスズリに急接近。
最初のコメントを投稿しよう!