第3話

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腕を突き出し、初撃決着を狙う。 加速。吸い込まれるようにスズリの胸に腕が伸びて。 「甘い」 右足踵を軸に身体を回転させたスズリは、オレのパンチを軽々と避けた。 「なっ!」 渾身の一撃を躱され、大きな隙ができたオレの首元に迫る小刀。避けられない。 「〈炸裂(バースト)〉!」 オレが唱えると同時、アーマーの結合部から噴出される炎。まるで爆発の如きそれは、威力を落としていても、小刀とスズリの腕を弾き飛ばすには十分だった。 「あっぶねー。やっぱ強いな!」 「それはありがとう。俺も今の一撃で終わったと思ったんだけどね」 新たに数本のナイフを生みながらそう言ったスズリ。 〈炸裂(バースト)〉。能力使用による駆動が生む熱を装甲内に蓄積し、一気にそれを放つ攻撃。 メカニックは、本当に色々な機能を付けてくれていた。俺が能力を発動してから僅か十数時間の間でこんなものを作り上げるなんて、彼女はやっぱり天才なのかもしれない。 「続けようかっ」 スズリがこちらへ向かって突進してくる。が、その手には何も持っていない。 迎え撃とうと腕を構え、攻撃を見切ろうとする。 しかし、スズリが何をしてくるかさっぱりわからなかった。 ナイフから長刀まで多様な刃物を生み出していたスズリ。 ──何が来る!? 「『何が来る』って思ったね?」 「だからエスパーかよ!」 「教えよう。全部さ!」 叫び、開いた手をまるで張り手の様に突き出した。 同時、掌に出現する大量の刃物。 それこそナイフから長刀まで、掌を中心に拡散放出されたそれは、ほぼゼロ距離で俺に向かって襲いかかった。 回避不可能の攻撃。〈炸裂(バースト)〉はまだ溜まっていない。 ──ああくそ、強えぇな......! ▽ スズリは隠し技の一つ〈十重錬成〉を撃った。 加速する意識の中、鋭い焦りがスズリを襲う。 ──まずい! 予想を上回るユウキの強さ。久しぶりの他人との戦闘訓練。戦闘にノッていたスズリは、普段からは絶対に考えられないミスをした。 十の異なる刃物を同時に生み出す〈十重錬成〉。 今ユウキに繰り出したそれの中の一本、大型ナイフの刃のゴム化に失敗したのだ。 刃のゴム化には余計な手間が数手かかる。 ──言霊に正確に命令が届かなかった! その思考をした時、既にユウキは吹き飛んでいた。 全弾命中。バラバラと落ちる九の刃物。
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